C.千島海溝沿いの海溝型地震のモデル化
千島海溝沿いの海溝型地震の地震活動に関しては、「千島海溝沿いの地震活動の長期評価について」(地震調査委員会,2003)において論じられている。そこでは、1)プレート間地震、2)プレート内地震のそれぞれに対して、複数のタイプに分類した上で、過去の地震の概況ならびに次の地震の発生時期および規模について整理がなされている。評価対象領域を図2.3.2-12に示す。
- プレート間地震(M8クラスとM7クラス)
- M8クラスのプレート間地震:十勝沖の地震、根室沖の地震、色丹島沖の地震、択捉島沖の地震(十勝沖の地震と根室沖の地震については連動して発生する場合を含む)
- ひとまわり小さいプレート間地震:十勝沖・根室沖と色丹島沖・択捉島沖
- プレート内地震(M8クラス)
- 沈みこんだプレート内のやや浅い地震(深さ50km程度)
- 沈みこんだプレート内のやや深い地震(深さ100km程度)
以下では、これらのタイプの地震について、長期評価結果に基づいて設定した地震活動のモデルについて示す。
モデル化に際しては次の方針を設定した。
- 「M8クラスのプレート間地震」は、図2.3.2-12の4つの領域においてそれぞれ固有の断層面で固有規模の地震が発生すると仮定する。ただし、十勝沖の地震と根室沖の地震は、それぞれ単独で発生する場合に加えて、これら2つの地震が連動して発生する場合も考慮する。連動する確率は「対象とする期間(30年または50年)に両地震がともに発生する場合に16.7%の確率(6回に1回)で連動する」と仮定する。なお、この確率(6回に1回)は、「M8クラスのプレート間地震」の平均発生間隔(77.4年)と両地震が連動する場合のおおよその平均発生間隔(約500年)から定めた。
- 地震発生確率の算定において、発生間隔のばらつきαが幅をもって示されている場合には、中央値を用いる。
- マグニチュードが○○前後あるいは○○程度と記されている場合には、すべてそのマグニチュードの地震であると仮定する。地震動強さの評価では、いずれの地震もMw=Mjと仮定する。
- 震源域の場所に関して、「M8クラスのプレート間地震」については固有の断層面を設定するが、「ひとまわり小さいプレート間地震」と「沈みこんだプレート内のやや浅い地震」、「沈みこんだプレート内のやや深い地震」に関しては提案されている領域内に複数の断層面を置き、それぞれが等確率で起こると仮定する。なお、「ひとまわり小さいプレート間地震」が発生する領域はいずれもプレート上面の深さが20〜60kmの範囲とする。また、「沈みこんだプレート内のやや浅い地震」については1994年北海道東方沖地震の断層面を、「沈みこんだプレート内のやや深い地震」については1993年釧路沖地震の断層面を参考とする。
以下、各地震の活動モデルの諸元について示す。
(1)十勝沖の地震・根室沖の地震(連動する場合を含む)
M8クラスのプレート間地震のうち、十勝沖の地震と根室沖の地震については、それぞれが単独で発生する場合と、両地震が連動して発生する場合の両方を考える。その際、両地震が連動する確率は次のように仮定する。
- 対象とする期間(30年または50年)に両地震がともに発生する場合に16.7%の確率(6回に1回)で連動する。
ここで、この連動の確率(6回に1回)は、M8クラスのプレート間地震の平均発生間隔(77.4年)と両地震が連動する場合のおおよその平均発生間隔(約500年)から定めた。
表2.3.2-10に両地震の発生確率について示す。十勝沖の地震については期間50年の場合には2回発生する確率はほぼ0とはならない。上記を仮定した場合のこれら3つの地震(十勝沖の地震単独、根室沖の地震単独、両者連動)の発生パターンは表2.3.2-11に示す8ケースとなる。各ケースの生起確率を併せて表2.3.2-11に示す。
断層面の位置については、それぞれ単独で発生する場合、および連動して発生する場合のそれぞれにおいて、固有の断層面を設定する。連動して発生する場合のマグニチュードについては、十勝沖・根室沖の地震の長期評価における連動の場合の地震規模(M8.3)をそのまま用いる。
これらの地震のマグニチュードを表2.3.2-12に、断層面の位置を図2.3.2-13および図2.3.2-14に示す。
(2)色丹島沖の地震・択捉島沖の地震
M8クラスのプレート間地震のうち、色丹島沖の地震と択捉島沖の地震に関しては、長期評価の結果にしたがってモデル化する。その地震活動モデルの諸元を表2.3.2-13および表2.3.2-14に示す。また、断層面の位置を図2.3.2-15に示す。
(3)ひとまわり小さいプレート間地震
ひとまわり小さいプレート間地震に関しては、長期評価結果に従い、十勝沖・根室沖と色丹島沖・択捉島沖に分けてモデル化する。十勝沖・根室沖のひとまわり小さいプレート間地震の活動モデルの諸元を表2.3.2-15に、色丹島沖・択捉島沖のひとまわり小さいプレート間地震の活動モデルの諸元を表2.3.2-16に示す。
震源域の位置について、長期評価では各領域の「どこかで発生する」とされているが、ここではそれぞれの領域内でプレート上面の深さが20〜60kmの範囲にプレート境界に沿って長さ35km、幅35kmの矩形の断層面(Mj7.1相当)を十勝沖・根室沖については149(17〜22×7〜9列)、色丹島沖・択捉島沖については203(29×7列)並べて、そのいずれかで等確率で地震が発生すると仮定した。それぞれの地震の断層面の位置を図2.3.2-16および図2.3.2-17に示す。
(4)プレート内地震
プレート内地震(M8クラス)に関しては、長期評価の結果に従い、沈みこんだプレート内のやや浅い地震(深さ50km程度)と沈みこんだプレート内のやや深い地震(深さ100km程度)に分類してモデル化する。それぞれの地震の活動モデルの諸元を表2.3.2-17および表2.3.2-18に示す。
断層面の設定に関して、やや浅い地震については、1994年北海道東方沖地震の菊池・金森(1995)のモデルを参照し、長さ120km、幅60km、傾斜角75°の断層面をその上端がプレート境界の深度が20kmの等深線に一致するように置き、それを十勝沖から択捉島沖までの4領域内で等深線に沿ってランダム(半ずらし)に配置する。一方、やや深い地震については、1993年釧路沖地震のIde&Takeo(1996)のモデルを参照し、長さ60km、幅40kmで水平の断層面をプレート上面の深さが60kmの等深線の直下100kmのラインが断層面の中央となるように置き、それを十勝沖から択捉島沖までの4領域内で等深線に沿ってランダム(半ずらし)に配置する。断層面の配置の模式図を図2.3.2-18に示す。また、このようにして設定した断層面のモデルを図2.3.2-19および図2.3.2-20に示す。
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