8.代表地点における時刻歴波形

 前章までにおいて、各ケースの計算結果および観測記録との比較検討結果を示したが、本章では代表地点における時刻歴波形を示す。なお、前章で検討したように1968年日向灘地震を想定したケースについては、ケース1Aの方がより説明性が高いとされたことから、当該地震を想定したケースについては、ケース1Aの結果を代表とした。

8.1 時刻歴波形例示する代表地点

 図8.1-1に代表地点の位置図を示す。ケース1Aについては、前章の比較検討地点(気象庁の官署)を代表地点とし、さらに四国側の代表地点として宿毛市役所を追加した。ケース2については、宮崎県の主要都市および鹿児島県内の都市として、延岡市役所、日向市役所、西都市役所、宮崎市役所、日南市役所、都城市役所(以上6地点は宮崎県)、および国分市役所、鹿児島市役所(以上2地点は鹿児島県)とした。
 各地点とも、観測地点あるいは市役所に最も近い評価地点の計算結果(詳細法工学的基盤上面における速度波形および減衰定数5%の擬似速度応答スペクトル)を示す。

8.2 ケース1Aの時刻歴波形

 図8.2-1図8.2-3にケース1Aの時刻歴波形(速度波形)と減衰定数5%の擬似速度応答スペクトルを示す。また、各地点ともNS成分とEW成分の2成分の結果を示す。
 同図によれば、波形については、延岡測候所および宮崎地方気象台においては、2つのアスペリティに対応した2つのピークが見られる。四国の3地点(足摺分室、宇和島測候所、宿毛市役所)については、波形のピークは1つしか見られない。これは、南側の第1アスペリティに対して、評価地点が破壊進行方向と反対方向に位置しており、かつ第1アスペリティの応力降下量が第2アスペリティに比べて小さいことによるものと推測される。また、宮崎地方気象台および大分地方気象台においては、振幅は小さいものの深部地盤構造の影響と考えられる後続波が見られる。
 応答スペクトルで見られる卓越周期については、全評価地点で0.5秒および1〜2秒付近にピークが見られる。ただし、第2アスペリティに近い足摺分室においては、短周期成分が多く、0.5秒のピークがかなり高くなっている。

8.3 ケース2の時刻歴波形

 図8.3-1図8.3-4にケース2の時刻歴波形(速度波形)と減衰定数5%の擬似速度応答スペクトルを示す。また、各地点ともNS成分とEW成分の2成分の結果を示す。
 同図によれば、波形については、宮崎市役所および都城市役所においては、2つのアスペリティに対応すると考えられる2つのピークが見られる。それ以外の評価地点については、明瞭に2つのピークが分離しては見られない。ケース1Aに比べると、震源断層の位置が海岸近くに位置するため、宮崎市役所では、ケース1Aの場合よりも短周期成分を多く含んでいる。また、後続波は全評価地点とも振幅はかなり小さいものとなっている。
 応答スペクトルで見られる卓越周期については、ほぼ全評価地点で0.5秒および1〜2秒付近にピークが見られる。ただし、日向市役所についての1〜2秒付近のピーク、および日南市役所についての0.5秒付近のピークは顕著には見られない。


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