9.おわりに

 本検討では、地震調査研究推進本部地震調査委員会における検討より取りまとめられた「海溝型地震の強震動評価のレシピ」、および「日向灘および南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価」にしたがって断層モデルの設定等を行った。
 また、強震動予測に必要な3次元地下構造モデルを作成し、強震動計算に際しては高精度な広帯域ハイブリッド合成法を用いた計算を行った。
 本検討による成果と今後の課題は以下の通りである。

  • 本検討では、上記「レシピ」にしたがった設定により諸計算を行ったが、1968年日向灘地震を想定したケースについては、実際の観測記録との比較検討などを行い、実事象の説明性を高めたパラメータ設定によるケースも検討した。
  • 強震動計算については、ハイブリッド合成法を用いた計算を行うことによって、統計的な手法(統計的グリーン関数法)のみでは評価することが難しい3次元的な地下構造の形状を反映させることができ、より精度の高い面的な強震動予測をすることができた。
  • 3次元地下構造モデルの作成については、既往の調査・研究成果を踏まえて作成したが、本検討では、実際に観測された中小地震の観測記録との比較、および差分法による試算も行い、モデルのチューニングを試みた。その結果、地下構造モデルは、より改良されたものが作成されたと考えているが、対象地域におけるモデル構築に当たっての情報量が少なく、さらなる改良には、今後の情報の蓄積が必要であると考えられる。
  • 日向灘の地震については、上記「長期評価」においては、発生する地震の震源断層は特定されておらず、ある領域内でランダムに地震が発生するとして評価されている。本検討では、過去に起こった地震を想定し、震源断層を特定して強震動予測を行ったが、次に起こる地震の強震動予測としては、震源断層の位置のばらつき等を考慮した予測を行うことも必要であると考えられる。
  • 今回の地震動予測地図作成において、浅部地盤における地震動強さの評価手法については、微地形区分に基づく増幅率を用いて評価する手法に拠って行ったが、この手法では限界があることが今回の検討でも明らかにされ、より詳細な評価を行うためには、今後は浅部地盤における地震動強さの評価手法についても、検討していくことが必要であると考えられる。

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