4.2 巨視的断層パラメータの設定

 想定琵琶湖西岸断層帯地震の震源断層の推定結果に基づいて、巨視的断層パラメータを設定する。

 4.2.1 断層の位置( 長さと走向 )の設定

 長期評価による断層帯の位置に概ね対応させるように、想定琵琶湖西岸断層帯地震の位置(長さと走向)を設定する。図4.2-1に、想定琵琶湖西岸断層帯地震の特性化震源モデルの地表トレースを実線で示す。断層の長さは60 km、走向はN197°Eである。なお、図中の点線はこの西約7 kmに並行する花折断層の地表トレースである。

 4.2.2 傾斜角の設定

 地震調査研究推進本部の評価結果によれば、この地域に含まれる花折断層の北部・中部は横ずれ断層(一部東側隆起の上下成分を伴う)とされる(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2003b)のに対して、琵琶湖西岸断層帯の断層面は西傾斜でその西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層とされている(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2003c)。琵琶湖一帯とその西側の山地一帯との地震発生層の深さの違い(黒磯・岡野, 1990)や標高の違いは、琵琶湖西岸断層帯とその地中延長部を境界として概ね説明出来ると考えられる。
 断層の傾斜角は定かではないが、長期評価によれば、本断層帯の石庭付近で吉岡ほか(2000)が実施したトレンチ壁面では約30°の傾斜で東から西へ傾き下がる面を境にして地層の連続性が断たれている。しかし、この角度は地表付近の浅い部分での角度であり、西側に並行する花折断層との三次元的な位置関係を考慮すると、特性化震源モデル本体の位置する深さでは高角と考えるのが自然である。しかし、前述のように、両断層はその間隔がわずか約7 kmのままほぼ全長にわたって並行しており、地表では別断層であっても地中では何らかの関係があると考えるのが自然である。
 これを上手く説明出来る考え方として、図4.2-2に、地殻内断層のSlip Partitioningの説明( Bowman et al., 2003 )を示す。地下深部の斜めずれ高角断層が浅部で分岐して、地下深部の斜めずれ高角断層の直上付近の地表では横ずれ断層が、そこから少し下盤側に離れた地表には逆断層がそれぞれ現れる構造を指摘している。そこでここでは、この考え方を琵琶湖西岸断層帯と花折断層に適用する。
 図4.2-3に、琵琶湖西岸断層帯のモデルに直交する断面模式図を示す。図中に琵琶湖西岸断層帯とあるのは特性化震源モデル用の地表トレース位置であり、西側に並行する花折断層の地表トレースからは7 km離れている。ここでは、琵琶湖西岸断層帯と花折断層は、地震発生層以深では1つに収斂しており、地震発生層下端深さ18 kmで分岐して地表に至ると考える。このように考えると、直上付近の花折断層は横ずれ断層が主体となり、東側( 図では右側 )の琵琶湖西岸断層帯は逆断層が主体となることが説明出来る。両断層の成す角度は20°となり、従って、琵琶湖西岸断層帯のモデルの傾斜角は70°となる。
 以上に基づき、本検討では、想定琵琶湖西岸断層帯地震の傾斜角を70°と設定する。

 4.2.3 その他の巨視的パラメータの設定

 その他の巨視的断層パラメータは、強震動評価レシピに従って設定する。図4.2-4に、既往の研究で示された地震と比較して、想定琵琶湖西岸断層帯地震の地震モーメントと断層面積の関係を★印で示す。同様に、図4.2-5に、地震モーメントと短周期レベルの関係を★印で示す。


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