5.その他の検討

5.1 震源を予め特定しにくいグループ5の地震の深さのモデル化に関する検討

5.1.1 目的

 震源を予め特定しにくい地震のうちのグループ5の地震(陸域の地殻内の地震)については、比較的浅い位置で発生するため、深さをどのようにモデル化するかは結果に少なからず影響する可能性がある。そこで、深さのモデル化のための基礎資料として、簡易な解析条件を想定した上で、点震源を仮定した場合と矩形の断層面を仮定した場合のハザードカーブについて比較した。

5.1.2 評価条件

 一辺200kmの正方形の中心にサイトがあり、正方形内に1km×1kmの格子状に等確率で震源が位置すると仮定する。
 各格子点での地震の発生は経時的にポアソン過程に従うとし、その発生頻度( ≧5)は1×10-5 (1/年)、 値は0.9、最小マグニチュードは5.0、最大マグニチュードは6.7と仮定する。
 震源の深さならびに断層の大きさに関して、次の3つのケースを想定し、それぞれの場合のハザードカーブを評価する。

  • ケース1 : 点震源、深さ10km(昨年度の検討での条件)
  • ケース2 : 点震源、深さ3km(地震発生層の最上端)
  • ケース3 : 矩形の鉛直断層、断層の中心が各格子点の位置、断層長さはMに応じて松田式より定める。断層の幅は断層長さと等しいと仮定する。断層中心深さは3km〜17kmの一様分布。ただし、断層面は3km〜17kmの地震発生層を突き抜けないものとする。断層の走向は360度一様ランダムとする。

5.1.3 評価結果

 地表の計測震度のハザードカーブを図5.1.3-1に示す。図の縦軸は50年超過確率である。ここで、地盤増幅率は1.5を仮定している。
 図5.1.3-1より、点震源の場合には、深さが10km(ケース1)と3km(ケース2)のケースで50年超過確率が10%のレベルで計測震度で0.1程度の差が生じている。また、矩形断層面のケース3と点震源で深さが3kmのケース2はほぼ重なったハザードカーブとなる。

5.1.4 結論

 以上の検討により、深さや走向がランダムな矩形断層を想定した評価が最善と考えられるが、多大な計算時間を要することになるため、西日本の確率論的地震動予測地図試作版の作成においては、結果がほぼ等価な深さ3kmの点震源を仮定して計算を行う。


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