4.3 詳細法断層パラメータの設定

 4.3.1 詳細法に用いた断層パラメータの設定方法

 付録Bに示した詳細法計算手法による計算では断層面を要素断層に分割する必要があり、ここでは1つのメッシュサイズを2km×2kmとした。このため巨視的断層面やアスペリティなどはこのメッシュに合うように大きさを調整した。震源位置における媒質のパラメータについては、密度 =2.7、S波速度 =3.5km/s、せん断剛性率 とした。
 図4.3−1に中部単独活動の場合の計算に用いた断層モデルを示す。ここで、第1アスペリティ北東下端を破壊開始点とする場合をケース1、第2アスペリティの南西下端を破壊開始点とする場合をケース2とした。これら2つのケースの計算用に用いた断層モデルの地表面投影図を図4.3−2および図4.3−3に示す。図4.3−4には、中部・南西部同時活動の場合の計算に用いた断層モデルを示す。破壊開始は中部セグメントの破壊開始点からとし、第2アスペリティ南西下端(図中★印)とした。南西部セグメントの破壊開始は2秒後に第3アスペリティ北東下端(図中☆印)からとした。この時間差は両破壊開始点の直線距離約5kmを破壊伝播速度2.5km/sで割った値とした。図4.3−5にケース3の計算に用いた断層モデルの地表面投影図を示す。詳細法による計算のための断層パラメータを表4.3−1にケース1〜ケース3について示す。

 4.3.2 すべり速度時間関数

 付録Bに示した詳細法計算手法のうち、三次元有限差分法の計算では、中村・宮武(2000)の近似式によるすべり速度時間関数を用いた。表4.3−2に計算に用いたすべり速度時間関数のパラメータ一覧を示す。図4.3−6にケース1およびケース2の計算に用いたすべり速度時間関数を、図4.3−7にケース3の計算に用いたすべり速度時間関数を示す。実線が中村・宮武(2000)によるすべり速度時間関数で、点線がそれを計算用に三角形で近似したものである。

 4.3.3 統計的グリーン関数法のパラメータ

 付録Bに示した詳細法計算手法のうち、統計的グリーン関数法の計算では、統計的グリーン関数を作成する際に、地震波の放射特性 を考慮する必要がある。強震動を評価する領域内にある1地点を考えると、その地点は各要素断層から見て常に同じ方位に位置しているわけではないこと、および、短周期の地震記録には明確な放射特性が見られないことから、 は平均的な値を用いた。本断層面は傾斜角60°だが横ずれが卓越するというやや特殊な条件なので、計算地点と断層面との幾何学的関係および断層の滑りのタイプを考慮して、Boore and Boatwright (1984)に示された の値のS波の全震源球面上の平均値である0.63を水平2成分の自乗和平均と考え、具体的には = 0.63/√2 = 0.445を採用した。高周波遮断振動数 として、内陸地震であるので鶴来・他(1997)が兵庫県南部地震の観測記録を用いて推定した、 = 6.0 Hzを用いた。定数 は、佐藤・他(1994b)の推定値である = 4.2を用いた。


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