3.2.5 残差ブーゲー異常と微動アレー観測によるS波速度構造の融合
微動アレー観測の各観測地点の残差ブーゲー異常値と各速度層の出現深度の相関関係を図3.18に示す。
両者は比較的良好な相関関係を持つ。特に =2.1 km/secおよび = 3 km/secの層の相関は非常に高く、微動アレー観測によって推定されたS波速度構造の妥当性を示唆している。これらの相関関係を用いて残差ブーゲー異常値を各層の上面深度に変換した深度分布図を図3.19に、その金沢市付近の拡大図を図3.20に示す。金沢市付近の基盤までの深さは最も深いところでおよそ3.4 kmと推定された。
先にも述べたが森本・富樫断層帯周辺の地下構造は、大局的にはほぼ均一な堆積環境のもとに形成されていると考えられるが、平野中央部から離れるとB3やX2のように堆積環境が若干異なると思われる事例が見られる。本来、このような地域ではS波速度を変える、あるいは地下構造のモデル化手法そのものを変更するなどの検討が必要である。しかし、このような地域の深部地下構造に関する情報はほとんど存在しないため、詳細な検討は困難である。このような問題が地震動シミュレーションの結果に対してどの程度影響するかを把握することは今後の重要な課題であると言える。また、問題解決のためには地下構造データの更なる蓄積が期待される。
3.2.6 モデルパラメーターの設定と地震基盤以深の構造
本検討の地下構造モデルにおけるP波速度はPS検層から得られた経験的な関係を用いて(図3.21)S波速度から算出した。密度については既往の研究(Ludwig et al.、 1970)(図3.22)を参照し、S波速度及びP波速度それぞれに対応する密度を求め、2つの平均値を採用した。また、地震基盤よりも深い構造については、
- Zhao et al. (1992)による金沢平野付近のコンラッドおよびモホ面の上面深度およびP波速度、S波速度。
- 釜田・武村(1999)による1993年能登半島沖地震の表面波解析の結果、金沢地方気象台における
= 3.4 km/sec層の上面深度は4 kmである。
- Hi-net(Obara et al.、 2000)による当該地域の微小地震の発生深度(地震発生層)は4〜19
km付近に集中しており、この層が
= 3.4 km/sec前後の層(花崗岩)と対応することが妥当である。
などの知見を参考にして仮定した。なお、形状については情報が不足しているため、本検討では平行成層構造を仮定した。以上により作成された各層のモデルパラメーターを表3.3に示す。
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