■ 確率論的地震動予測地図の利用方法の例

　「確率論的地震動予測地図」とそれに関わる諸情報・データの活用方法の主な例をいくつか示します。ただし、これらはあくまでも例であって、個々の利用目的に応じた様々な判断や工夫を加えることが望ましいと考えられています。

★　確率論的地震動予測地図（超過確率や地震動強さの面的分布図）

地域によって地震ハザードに違いがあることが容易に理解できます。また、強い揺れに見舞われる確率の地域比較により、地震防災対策の優先度の決定、立地検討に利用できます。さらに、確率を固定した場合の地震動強さの分布図は、リスクレベルを決めた場合の最大の揺れを意味することから、地震荷重の設定などに利用可能です。ただし、より小さい確率レベルの事象が発生した場合の対策も併せて検討する必要があります（中越や福岡の例から）。

★　ハザードカーブ

工学的基盤最大速度は、構造物の耐震設計や耐震性評価に際して対象敷地の地震危険度の指標となり、地表最大速度・震度は、地震危険度を踏まえた地域内複数候補地点の立地検討等に有益な情報、あるいは、地震防災・リスク評価等のための基礎資料ともなります。
地震動予測地図は、ハザードカーブ上のある断面を見たものです。ハザードカーブ全体を見ることにより、対象地点の地震ハザードの性状を理解することができます。また、詳細な地震リスク評価を実施する上では、特定の断面ではなく、ハザードカーブ全体を利用する必要があります。

★　影響度

影響度は、構造物の耐震設計や耐震性評価あるいは地震防災・リスク評価等に際して想定すべき地震を選定する上で有効な判断材料となります。想定すべき地震が明確な場合には、まずその地震を想定することが先決です。

★　特定地点での予測の個別の高度化

工学的基盤の結果を用いて、独自に評価したより詳細な増幅率を取り入れるなど、特定地点での予測の高度化の道が残されています。

★　表層地盤増幅率

全国を概観した場合に、どの地域が相対的に揺れやすいかが大雑把にわかりやすく示されるため、地盤構造に関する理解の普及の一助となります。ただし、地域により詳細な揺れ方に関する情報を必要とする場合には、よりきめ細かな地盤のモデル化が必要です。

★　断層モデル

震源を予め特定した地震については巨視的断層面の幾何形状がモデル化されているので、個々の耐震設計や耐震性評価あるいは地震防災・リスク評価のために断層モデルを考慮したい場合には、これを利用したり改良したりすることが可能で、どのような理由でどこをどの程度変更したのかの説明も明快となります。

★　地域の詳細情報を加味した利用

対象敷地の詳細情報に基づき工学的基盤以浅の表層地盤増幅率を改めて評価し、設計や検討に利用することが考えられます。また、地域の詳細情報を加味して細かいメッシュでアドバンスマップを作成し、一層きめ細かい情報として整理することも考えられます。

★　地震ハザード・リスク評価手法の高度化への利用

「全国を概観した地震動予測地図」で用いられた評価手法は完成品でなく地震調査研究の進展と共に新たな知見に照らして見直されますので、自然現象である地震・地震動の理解とそれを踏まえた地震ハザード・リスク評価手法の高度化が肝要です。「確率論的地震動予測地図」の作成に用いられている評価手法がそのための議論の出発点となることが期待されます。