4.2.3 地震動予測地図の利用内容

 建物の耐震補強や改築には多額の費用がかかるため、まず耐震診断を実施することになるが、4.2.1節で述べたように耐震診断自体が進んでいない現状がある。そこで、限られた予算を有効に利用して既存学校施設の耐震化を進めるために、図4.2.1に示したようなフローで耐震化推進計画の策定方法が例示されている。専門家を含めた検討組織を設置した上で、まず対象地域内にある建物の中で耐震診断又は耐力度調査を実施する順番を決めるために「耐震化優先度調査」を実施する。その結果にもとづき、優先順位の高い建物から耐震診断を実施して耐震補強あるいは改築といった耐震化事業の必要性を評価する。ただし、耐震化事業は多額の費用がかかることから、地震時に倒壊や大破の危険性がある緊急度の高い建物から先に事業を実施するように年次計画を策定する必要がある。
 地震動予測地図の利用は、耐震診断の優先順位の調査、そして耐震化事業を実施する順番を決めるための緊急度調査において記述されている。以下にその具体的な内容について述べる。

(1) 耐震診断の優先順位を決める調査における利用

 耐震化優先度調査は、どの学校施設から耐震診断又は耐力度調査を実施すべきかを効率的に決めるために、その優先度を5ランクに分類することを目的として実施される。調査方法は鉄筋コンクリート造校舎と鉄骨造屋内運動場とで次のように異なっているが、いずれも当該建物が立地している地域の想定震度を調査して優先度分類を行うこととされている。

@ 鉄筋コンクリート造校舎

  1. 基本分類:建築年及び階数によりI(優先度高い)〜V(優先度低い)で分類される。
  2. 補正項目:以下の各項目についてA(優先度低い)〜C(優先度高い)で分類される。
    1. コンクリート強度(設計基準強度、強度試験値)
    2. 老朽化(鉄筋腐食度、ひび割れ)
    3. プラン(はり間スパン数、桁行スパン長)
    4. 耐震壁の配置(下階壁抜け架構、はり間壁間隔、妻壁の有無)
    5. 想定震度
         A:震度5強以下、B:震度6弱、C:震度6強以上
         ただし想定震度が設定されていない場合は分類をBとする。

A 鉄骨造屋内運動場

 以下の各項目についてA(優先度低い)〜C(優先度高い)で分類される。

  1. 鉄骨軸組筋かい耐震性能
  2. 鉄骨腐食度
  3. 代表的軸組材の座屈状況
  4. 代表的ラーメン架構の柱梁溶接仕口部の溶接状況
  5. 代表的軸組材及びその接合部の構造安全性
  6. 壁材や天井材等、落下物等に係る安全性
  7. 想定震度
       A:震度5強以下、B:震度6弱、C:震度6強以上
       ただし想定震度が設定されていない場合は分類をBとする。

(2) 耐震補強や改築の事業実施のための緊急度調査での利用

 優先度の高い建物から耐震診断又は耐力度調査を実施した結果をもとに、耐震化事業の緊急度を検討して事業の年次計画の策定に資することを目的としている。地震時に倒壊又は大破する恐れのある建物を優先することとして、構造耐震指標と保有水平耐力に係る指標によって耐震化事業の緊急度を7段階にランク分けして事業の緊急度を判定することとしている。ただし、実情に応じて緊急度ランクの修正を行うことができるとして、報告書にはその修正例がいくつか挙げられている。想定震度に関する項は以下のとおりである。

当該建物が立地している地域の想定震度が6強以上に評価されている場合は、緊急度を1ランク程度上げてもよい。

さらにその注記として、

想定される震度が7と評価される場合には、緊急度をさらに1ランク高めるなどの考慮を払うことが望ましい。震度7になる可能性のある地域とは、存在が確認されている断層トレースまでの距離が5km以下の断層線近隣の地域、建築基準法の第3種地盤に相当する堆積層の厚い地域、がけ地や盆地の縁などの地形効果により地震動が増幅される恐れのある地域などである。

と述べられている。

(3) その他

 学校施設の耐震性能目標の設定においては、地震動予測地図の強震動評価結果を目標性能に反映させる等の直接的な利用方法については言及していない。間接的に、当該地域に予測される地震動の大きさを考慮することも大切であり、それには地震調査研究推進本部が作成する「全国を概観した地震動予測地図」をはじめ、中央防災会議や地方公共団体等が作成する地震動予測地図等を活用することが考えられる、というコメントが記述されている。


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