5.6 北日本の確率論的地震動予測地図(試作版)とその後発生した主な地震による震度との比較 北日本の確率論的地震動予測地図(試作版)(地震調査委員会長期評価部会・強震動評価部会,2003)が公表されたのち、東北・北海道地方において複数の被害地震が発生し、多くの地点で震度6弱、6強を観測した。ここでは、これらの地震において震度6弱以上を記録した地点と北日本の確率論的地震動予測地図を比較し、確率論的地震動予測地図の意義について考察した。
図5.6-1は北日本の確率論的地震動予測地図のうち、全地震を考慮したトータルのハザードマップと昨年5月26日の宮城県沖の地震で震度6弱を記録した地点を比較したものである。確率論的地震動予測地図は、(a)2003年から30年間に震度6弱以上を受ける確率を示したマップと、(b)2003年から30年間の超過確率が3%となる震度階を示したマップ、の2種類である(以下同様)。同図(a)より、震度6弱を記録した地点の大半は今後30年に震度6弱以上を受ける確率が3%以上であり、多くの地点では6%以上と高かったことがわかる。なお、宮城県北部から岩手県南部でのハザードでは宮城県沖地震の影響度(貢献度)が高いことがわかっているため、参考のために、こうした異種の地震を除いたグループ4の地震(宮城県沖の地震と同タイプ)のみによるハザードマップとの比較を図5.6-2に示す。 宮城県沖地震の発生確率が高いことから、宮城県周辺では同地震がシナリオ地震として想定されるのが一般的である。しかしながら、昨年5月と7月に実際に発生したのは宮城県沖地震とは異なる地震であった。宮城県沖地震の発生を前提としたシナリオ型地震動予測地図(地震調査委員会,2003b)によれば、昨年5月26日の宮城県沖の地震と7月26日の3つの宮城県北部の地震で震度6弱以上を記録した地点のいくつかでは、宮城県沖地震では震度6弱に至らないことが明らかになっている。したがって、昨年起こった事実は特定のシナリオ地震を想定するのみでは実際に発生する地震動の評価として不十分な場合があることを示している。 図5.6-5は全地震を考慮したトータルのハザードマップと9月26日の十勝沖地震で震度6弱を記録した地点を比較したものである。ここでも震度6弱を記録した地点の大半は今後30年に震度6弱以上を受ける確率が6%以上と高かったことがわかる。しかしながら逆に、確率論的地震動予測地図で震度6弱以上を受ける確率が6%以上の地域がすべて十勝沖地震で震度6弱以上を受けた訳ではないことに注意する必要がある。十勝沖地震は長期評価で事前に想定されていた地震とほぼ同じであったことが明らかにされており(地震調査委員会,2003a)、こうしたケースではシナリオ型の地震動予測地図の方がより実情に近い震度分布を与えてくれることになる。 5.6の参考文献
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