6.3.3 「詳細法」による強震動予測結果と距離減衰式との比較による検証
強震動予測結果の検証として、断層最短距離と「詳細法工学的基盤」上の最大速度値との関係を司・翠川(1999)の距離減衰式(経験式)と比較して示す(図6.27, 6.38, 6.49, 6.60, 6.71, 6.82, 6.93, 6.104, 6.115)。CASE9については断層最短距離10km前後において、またCASE1については断層最短距離10km以下において、予測結果が経験式を大きく上回っており、中には経験式の3〜4倍になる予測値もある。それぞれ、ディレクティビティ効果やアスペリティの位置が浅いことによるものであると考えられる。アスペリティ位置が浅い場合でも、アスペリティが浅くなるに従い応力降下量が減少するように設定した場合には、予測結果は経験式に近づくと考えられるが、現状では内陸の地震についてアスペリティの深さと応力降下量との明確な関係を示す情報は得られていないため、今後検討が必要である。アスペリティが震源断層中央に位置するCASE3でも断層最短距離20km未満で経験式より若干大きめの値となっているが、これもディレクティビティ効果によるものである。
上記以外のケースでは、若干予測結果の曲線の傾きが大きい傾向も認められるが、おおまかには強震動予測結果と経験式の対応は良いといえる。
一方で、経験式は内陸で発生した様々な震源メカニズムの地震のデータの平均を表しており、これと典型的な逆断層として計算された予測結果との比較を行えば、本来その傾向には違いがあるべきだと考えることができる。また、CASE1のような(アスペリティが浅く、ディレクティビティ効果の顕著な逆断層の)地震の断層最短距離の短いデータが経験式のもととなる統計データに含まれていないという問題もある。したがって、今後の観測等により、細かく分けられた断層タイプ毎の距離減衰式を求めるためデータの充実が期待される。
「詳細法」による予測結果と「簡便法」による予測結果(最大速度)の比較を地図上で行い、図6.28, 6.39, 6.50, 6.61, 6.72, 6.83, 6.94, 6.105, 6.116に示した。この比較によるとアスペリティの近傍および断層に直交する方向にある計算地点において、「詳細法」の予測結果が「簡便法」より大きい値を示すことが分かる。これより、震源断層からの距離が同じであっても、アスペリティに近いところにおいては地震動が大きくなること、および「簡便法」では反映されていないディレクティビティ効果が「詳細法」では反映できていることが確認できる。
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