2. 地震動予測地図作成の概略
地震調査委員会では、森本・富樫断層帯について、その位置および形態、過去や来の活動等に関する評価結果を「森本・富樫断層帯の評価」(地震調査委員会、2001;以下「長期評価」という)としてまとめ、公表している。その報告を踏まえ、強震動評価を行った。
2.1 想定する震源断層
森本・富樫断層帯は、「長期評価」によると、石川県河北郡津幡町(つばたまち)から金沢市を経て石川郡鶴来町(つるぎまち)に至る長さ26kmの断層帯で、断層帯の東側が西側に乗り上げる逆断層である(図2.1)。過去の最新の活動は約2千年前以後、約2百年前以前にあったと考えられており、今後30年の間に地震が発生する可能性が、確率の最大値をとると我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。
想定森本・富樫断層帯地震(森本・富樫断層帯を起震断層とした地震)の地震動評価の計算対象領域として、震度5強以上の地震動が予測される領域を対象とした詳細法による地震動予測地図作成領域の2つの領域を設定している。
まず、簡便法による地震動予測地図作成領域は森本・富樫断層帯のほぼ中心部に位置する金沢市を中心に、北緯35.8度〜37.2度まで、東経136度〜137.5度の領域である。図2.2に巨視的モデルの設定位置と簡便法による地震動予測地図作成領域を示す。
この領域における簡便法による地震動評価を行う計算地点は国土数値情報の3次メッシュに対応している。
一方、詳細法による地震動予測地図作成領域は、森本・富樫断層帯に沿って設定された矩形領域である。領域の4隅の座標値は
北端:北緯36.987° 東経136.764°
東端:北緯36.677° 東経137.312°
南端:北緯36.013° 東経136.736°
西端:北緯36.323° 東経136.188°
となっている(本検討では改正測量法以降の日本測地系2000を用いている)。この領域は簡便法による地震動の事前評価を行った後に、概ね震度5強よりも強い地震動が予測される領域を想定して設定されたものである。
この領域における詳細法による地震動評価を行う計算地点は矩形の計算領域を1km間隔にグリッド分割した点である。具体的には、縦 方向(南南東〜北北西方向)90グリッド、横(東北東〜西南西方向)60グリッドに分割した各点において地震動評価を行った。上述のように詳細法では、工学的基盤で時刻歴波形が1kmグリッド、90×60=5400点で得られるが、本検討でそれらの波形を全て表示することは出来ない。
そこで、6章では、金沢、小松、羽咋、白川、高岡(市役所・町村役場位置)における工学的基盤波を代表例として示す。これら5地点の位置を図2.3に示す。この観測点は森本・富樫断層帯を取り巻くように配置した。
2.2 強震動評価の流れ
森本・富樫断層帯の地震を想定した強震動評価全体の流れを以下に示す。図2.4には作業内容をフローチャートにして示す。
- 地震調査委員会による「森本・富樫断層帯の評価」(地震調査委員会、2001;以下、「長期評価」という)より、巨視的震源特性を設定した。ただし、長期評価では、「断層面の傾斜と深部形状については十分な資料がない」としていることより、傾斜角のパラメータを3通り設定した。
- 1. の巨視的震源特性等から微視的震源特性を評価して特性化震源モデルを設定した。ここで、断層傾斜角、アスペリティおよび破壊開始点を変えた9通りのケースを設定した。
- 震源断層周辺の三次元地盤構造モデルは面的に得られている重力データを基に既存の探査データを利用して作成した。浅い地盤構造モデルは国土数値情報(国土地理院、1987)を基に作成した。また、別途ボーリングデータも収集した。
- 2. で作成された特性化震源モデル、3. で作成された三次元地盤構造モデルを基に震源断層周辺の領域において、1kmメッシュ単位で「詳細法」を用いて強震動評価を行った。その強震動評価結果については、既存の距離減衰式と比較を行い、検討を行った。
- 平均的な地震動分布を評価するため「簡便法」を用いた強震動評価も行った。
次章以降、上記の評価作業内容について説明するが、強震動評価の構成要素である「震源特性」、「地盤構造モデル」、「強震動計算方法」、「予測結果の検証」の考え方については、「活断層で発生する地震の強震動評価のレシピ」にもとづいたものである。
|