(5)各地図の特徴(主として地表の計測震度による結果で特徴を比較)

図1(1)1(3)(全地震によるトータル、中央値、地域区分する、微小地震、50 年)
  • 50 年超過確率が39%の場合には想定東海地震(仮)の影響によって、震度6弱以上の範囲は主として静岡県北東部と山梨県の一部となっており、また震度階の境界もそこから同心円状に拡がっている。
  • 50 年超過確率10%で見ると、震度が6弱以上の領域は、静岡県の全域、山梨県の南部と西部、神奈川県南西部、長野県南部および図示した範囲における愛知県全域に及ぶ。加えて、糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)の影響が際立ってくる様子が視覚的にも明瞭となり、同断層の周辺でも震度6弱以上となる。
  • 50 年超過確率が10%→5%→2%と確率レベルが低くなっても、震度階の境界線の地域分布(形状)は類似している。ただし、確率レベルの低下に伴い、同じ震度階級の境界線は駿河湾奥と糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)を中心として拡がっていく。今回の試作領域では50 年超過確率が2%となると、半分以上の地域で震度6弱以上となる。
  • 駿河湾奥周辺に位置する地域では想定東海地震(仮)に加えて、富士川河口断層帯の影響により、特に50 年超過確率5%以下の確率レベルにおいて非常に高いハザードとなっている。
図2(1)2(3)(全地震によるトータル、最大値、地域区分する、微小地震、50 年)
  • 基本的に地震発生確率の取扱いが中央値のケース(図1)と大差ない。
  • 図1 との違いは富士川河口断層帯の発生確率(8.6%→18%)と、想定関東地震(仮)が考慮されるか否か(発生確率0%→1.5%)である。したがって、違い(といっても非常にわずかだが)が見られるのは確率レベルが5%以下で、かつ静岡県西部〜神奈川県東部にかけての地域のみである。
  • なお、各地震ごとに分解した地図を用いて、98 活断層帯の発生確率の取扱い条件の違いによる影響は図9図10、海溝型地震の発生確率の取扱い条件の違いによる影響は図14図15 で比較できる。
図3(1)3(3)(全地震によるトータル、中央値、地域区分する、中地震、50 年)
  • 基本的にグループ4、5の地震のカタログとして微小地震を用いたケース(図1)と大差ない。
  • これは、今回の試作領域においてグループ4およびグループ5の地震の貢献度がそれほど大きくないためである。確率レベルが低くなるほどこれらの地震の貢献度は相対的に小さくなるので、グループ4およびグループ5の地震の取扱い条件の違いで結果に最も差が現れるとすれば50 年超過確率が39%の場合である。図3図1 を比較すると長野周辺などでわずかに違いが見られる。
  • なお、各地震ごとに分解した地図を用いて、地震カタログの条件の違いをより詳細に見るには、グループ4の地震については図22図23、グループ5の地震については図26図27 で比較できる。
図4(1)4(3)(全地震によるトータル、最大値、地域区分する、中地震、50 年)
  • これらの図は、図2 とは地震カタログの違い、図3 とは98 活断層帯と海溝型地震の発生確率の違いがある。しかし、これらの評価条件の違いによる影響は上述したものと同様であり、いずれの比較においても結果には大差ない。
図5(1)5(3)(全地震によるトータル, 中央値, 地域区分しない, 微小地震, 50 年)
  • これらの図は、図1 と比較することにより、地域区分する/しないの違いによる結果の差が把握できるが、今回の試作領域ではグループ4およびグループ5の地震の貢献度がそれほど大きくないこともあって、基本的に両図にはほとんど違いは見られない。
  • なお、各地震ごとに分解した地図を用いて、地域区分の有無による違いをより詳細に見るには(微小地震の場合)、グループ4の地震については図22図24、グループ5の地震については図26図28 で比較できる。
図6(1)6(3)(全地震によるトータル, 最大値, 地域区分しない, 微小地震, 50 年)
  • これらの図は、図2 とは地域区分する/しないの違い、図5 とは98 活断層帯と海溝型地震の発生確率の違いがある。しかし、これらの評価条件の違いによる影響は上述したものと同様であり、いずれの比較においても結果には大差ない。
図7(1)7(3)(全地震によるトータル、中央値、地域区分しない、中地震、50 年)
  • これらの図は、図3 とは地域区分する/しないの違い、図5 とは地震カタログの違いがある。それぞれの図の比較において、50 年超過確率39%の場合に長野県〜富山県付近の震度階の境界線に差が見られるものの、それ以外に関しては大きな差はない。
  • なお、各地震ごとに分解した地図を用いて、地域区分の有無による違いをより詳細に見るには(中地震の場合)、グループ4の地震については図23図25、グループ5の地震については図27図29 で比較できる。
図8(1)8(3)(全地震によるトータル、最大値、地域区分しない、中地震、50 年)
  • これらの図は、図4 とは地域区分する/しないの違い、図6 とは地震カタログの違い、図7 とは98 活断層帯と海溝型地震の発生確率の違いがある。それぞれの図の比較において、上述したのと同様な違いがわずかに見られるが、大局的には大きな違いではない。
図9(1)9(3)(98 活断層帯の全活断層帯、中央値、50 年)
  • 50 年超過確率が39%の場合には特定の活断層の影響は顕著ではなく、総じて強いハザードとはならない。50 年超過確率が10%になると糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)の影響が顕著に現れはじめ、50 年超過確率が5%以下の確率レベルになると糸静線に加えて神縄・国府津-松田断層帯、富士川河口断層帯、伊那谷断層帯などの他の活断層の周辺でも震度6弱以上となる。
  • 後の糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)を除いた場合の結果(図12図13)と比較すれば明らかなように、今回の試作領域では上記の4断層以外の活断層の影響はそれほど顕著ではない。
図10(1)10(3)(98 活断層帯の全活断層帯、最大値、50 年)
  • 基本的には98 活断層帯の発生確率が中央値のケース(図9)と似た結果である。中央値(図9)のケースと比べると、富士川河口断層帯の発生確率が大きくなっているので、その周辺において相対的に高いハザードとなっている。
図11(1)11(3)(98 活断層帯のうち糸静線のみ、50 年)
  • 糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)は50 年発生確率が23%のために、この地震による50 年超過確率39%の地図は表示されない。
  • 50 年超過確率10%以下の確率レベルでは、確率レベルの低下とともに震度階の境界線が断層面を中心として外側に拡がっていく様子が窺える。
図12(1)12(3)(98 活断層帯のうち糸静線を除くそれ以外、中央値、50 年)
  • 糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)以外の活断層に関しては、50 年超過確率10%で神縄・国府津-松田断層帯、富士川河口断層帯、伊那谷断層帯の周辺で震度5強以上の地域が現れはじめ、確率レベルの低下に伴って、高いハザードの地域が断層の周囲に拡大していく。
  • ただし、図11 と比較して明らかなように、糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)は発生確率が高く地震規模も大きいので、それに比べれば糸静線以外の活断層により高いハザードが得られる地域はある程度限定される。
図13(1)13(3)(98 活断層帯のうち糸静線を除くそれ以外、最大値、50 年)
  • 基本的には98 活断層帯の発生確率が中央値のケース(図12)と似た結果である。中央値(図12)のケースと比して、富士川河口断層帯の発生確率が大きくなっているので、その周辺において相対的に高いハザードとなっている。
図14(1)14(3)(海溝型4 地震のトータル、中央値、50 年)
  • 想定東海地震(仮)と東南海地震の影響が特に強いことから、大局的に見た震度分布はやや扁平な同心円状となっており、確率レベルが低くなるのに伴って、同じ震度階の境界線は北側方向に拡がっていく。ただし、最もハザードの高い地域は同心円の中心よりやや東方にずれ、駿河湾奥周辺である。
  • 50 年超過確率が10%の震度が6弱以上の領域は、静岡県の全域、山梨県の南部と西部、神奈川県南西部、長野県南部および図示した範囲における愛知県全域に及ぶ。
図15(1)15(3)(海溝型4 地震のトータル、最大値、50 年)
  • 想定東海地震(仮)を除く3地震の発生確率として最大値をとったものであるが、基本的には図14 とほぼ同じである。
  • 図14 との比較では、東南海地震と南海地震の発生確率がわずかに増えたことの影響は図にはほとんど現れていない。想定関東地震(仮)の影響は、50年超過確率が5%以下の図における試作領域南東端の一部でわずかに現れている。
図16(1)16(3)(海溝型4 地震のうち想定東海地震(仮)のみ、50 年)
  • 基本的な傾向は図14 と同じであり、今回の試作領域に対して想定東海地震(仮)の影響がきわめて強いことがわかる。
  • 図14 と比較すると、試作領域の西部におけるハザードが低くなっており、この違いが東南海地震の影響を示している。
図17(1)17(3)(海溝型4 地震のうち東南海地震のみ、中央値、50 年)
  • 震度階の境界線の分布は、図の南西部を中心とする同心円状となる。
  • 50 年超過確率が10%で見ると、震度6弱以上となる地域は、断層面に近い領域の南西端部を除けば、地盤増幅率が大きな地域に点在しているのみである。
図18(1)18(3)(海溝型4 地震のうち東南海地震のみ、最大値、50 年)
  • 東南海地震に関して、発生確率の取扱い条件が最大値のケースでは中央値のケースに比べて50 年間の発生確率がわずかに増えている(87%→90%)が、図17 とほぼ同じ結果である。
図19(1)19(3)(海溝型4 地震のうち南海地震のみ、中央値、50 年)
  • ハザードの分布は、図の南西端から北東端に向かってなだらかに減少する。
  • 50 年超過確率10%における震度分布はごく一部を除いて震度4以下であり、試作領域に対する南海地震の影響は小さいと言える。
図20(1)20(3)(海溝型4 地震のうち南海地震のみ、最大値、50 年)
  • 南海地震に関して、発生確率の取扱い条件が最大値のケースでは中央値のケースに比べて50 年間の発生確率がわずかに増えている(79%→81%)が、図19 とほぼ同じ結果である。
図21(1)21(3)(グループ1の地震に対応する全断層、50 年)
  • 50 年超過確率が39%と10%におけるハザードの分布はなだらかであり、活断層の直接の影響は見られない。活断層の影響が現れてくるのは50 年超過確率が5%以下の確率レベルである。
  • 今回の試作領域では、活動度が高いとされる霧ヶ峰断層帯、浅間西断層群などいくつかの活断層の周辺で低確率レベルにおいてハザードが高くなり、特に上記2断層のごく近傍では、50 年超過確率2%において震度6弱となる。ただし、これらの活断層は糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)と比較して長さが短く地震規模も小さいことから、その影響範囲はかなり狭い地域に限られている。
図22(1)22(3)(グループ4、地域区分する、微小地震、50 年)
(注)図2225 のグループ4の地震の発生場所は、図22 の地震活動域の線より南側のみである。
  • 全体の傾向として、伊豆半島から伊豆諸島の地震が影響する静岡県の東部でハザードは最も高く、北西に向かって低くなる。
  • 50 年超過確率が10%の震度分布では、静岡県東部とその他一部地域で5強以上(一部では6強)となるが、それ以外の地域では震度5弱以下となる。
図23(1)23(3)(グループ4、地域区分する、中地震、50 年)
  • 図22 と同様に南東部で高く北西部で低い傾向となる。図22 と比較して、試作領域の南西部や静岡県東部でハザードが低下する。試作領域南西部の地震活動域と伊豆半島を含む地震活動域での地震発生頻度が、微小地震を用いた場合よりも低く評価されているためと考えられる。
図24(1)24(3)(グループ4、地域区分しない、微小地震、50 年)
  • 大まかな傾向は図22 とほぼ同傾向であるが、試作領域の西半分でややハザードが小さくなる。これは、試作領域南西部の地震活動域内で地震活動のコントラストがついた(最北部では地震が発生しない)ためと考えられる。
図25(1)25(3)(グループ4、地域区分しない、中地震、50 年)
  • 傾向は同じ中地震に基づく図23 とほぼ同様であるが、試作領域の北東部を除きグループ4のモデルの中では最も小さいハザードとなる。
図26(1)26(3)(グループ5、地域区分する、微小地震、50 年)
 (注)図2629 のグループ5の地震の発生場所は、試作領域内では、伊豆半島を含む領域以外の全域である。
  • 工学的基盤では、地震活動域ごとの地震発生頻度の大小がほぼそのままハザードの大小として反映される結果となっており、大まかには、北西で高く、南東で低い傾向がある。ただし、地域間の差は小さい。
  • 50 年超過確率が10%の震度の値は、地盤の増幅率の大きいところでは震度5弱から一部で5強、他は4である。
図27(1)27(3)(グループ5、地域区分する、中地震、50 年)
  • 微小地震に基づく図26 と比較して、図示した領域の北東と北西の地震活動域で地震発生頻度が下がるが、他の活動域では逆に頻度が上がるために、これを反映したハザードの分布となる(例えば甲府周辺で上がるなど)。ただし、工学的基盤での地域差が小さいという点では、図26(3)と同様である。
図28(1)28(3)(グループ5、地域区分しない、微小地震、50 年)
  • 工学的基盤におけるハザードの地域差は地域区分する方法に基づく図26(3)図27(3)よりも大きくなる。長野県西部地震の余震の影響が現れていると考えられる。
  • 50 年超過確率が10%の震度を図26(1)と比較すると、長野県西部から岐阜県東部の広い領域と、小田原付近から西方に富士五湖周辺までの領域で震度5弱となる点が大きく異なる。
図29(1)29(3)(グループ5、地域区分しない、中地震、50 年)
  • 工学的基盤におけるハザードの地域差は、図28(3)と同程度についている。しかし、その分布はかなり異なっており、長野県西部から岐阜県東部のハザードが小さくなる一方で、長野市周辺でのハザードが大きくなる。この特徴は最近の微小地震を用いた場合(図28(3))には見られないことから、松代群発地震の影響と考えられる。
  • 50 年超過確率が10%となる震度を見ると、長野市周辺と神奈川・山梨・静岡の県境付近においてグループ5に対する他の3つの結果よりも大きく、震度5弱の領域が広がる。逆に、伊那盆地(飯田市を含む南北の細長い領域)では、他の3つのケースでいずれも震度5弱であったのに対して、このケースのみ震度4に1ランク低下する。
図30(1)30(3)(期間30 年、98 活断層帯の全活断層帯、中央値)
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図9)と同じである。震度6弱以上の範囲は糸魚川-静岡構造線断層帯(北部、中部)、神縄・国府津-松田断層帯、富士川河口断層帯、伊那谷断層帯の周辺に見られる。
  • 30 年超過確率が0.1%という極低頻度の確率レベルでは広い範囲にわたって震度6弱以上となる。
図31(1)31(3)(期間30 年、98 活断層帯の全活断層帯、最大値)
  • 基本的には98 活断層帯の発生確率が中央値のケース(図30)と似た結果である。中央値(図30)のケースと比べると、富士川河口断層帯の発生確率が大きくなっているので、その周辺において相対的に高いハザードとなっている。
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図10)と同じである。
図32(1)32(3)(期間30 年、98 活断層帯のうち糸静線のみ)
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図11)と同じである。
  • 30 年超過確率が0.1%という極低頻度の確率レベルでは、震度階の境界線が断層面を中心として外側に拡がっていく様子が窺える。
図33(1)33(3)(期間30 年、98 活断層帯のうち糸静線を除くそれ以外、中央値)
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図12)と同じである。
  • 30 年超過確率が0.1%という極低頻度の確率レベルでは、多くの活断層の周辺でも震度6弱以上の地域が現れることがわかる。
図34(1)34(3)(期間30 年、98 活断層帯のうち糸静線を除くそれ以外、最大値)
  • 基本的には98 活断層帯の発生確率が中央値のケース(図33)と似た結果である。中央値(図33)のケースと比べると、富士川河口断層帯の発生確率が大きくなっているので、その周辺において相対的に高いハザードとなっている。
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図13)と同じである。
図35(1)35(3)(期間30 年、グループ1の地震に対応する全断層)
  • 30 年超過確率3%の結果は基本的に50 年超過確率5%の結果(図21)と同じである。
  • 30 年超過確率が0.1%という極低頻度の確率レベルでは、50 年超過確率2%の場合(図21(1)右下)でもわずかしか見られなかった震度6弱の範囲が種々の活断層のまわりで現れてくることがわかる。