4.3 微視的断層パラメータの設定

 中央構造線想定金剛和泉地震の巨視的断層パラメータに引き続き、微視的断層パラメータを設定する。

 4.3.1 各アスペリティの位置と面積比の設定

 長期評価(地震調査委員会, 2003a)によれば、和泉山脈南縁部分の根来断層での平均右横ずれ変位速度は約1.8〜3.5 m/千年と推定されている。
 本検討では、前述のように、和泉山脈南縁部分は右横ずれを主体とする断層帯と考え、その北側ブロックの東側末端部に逆断層の金剛山地東縁部分が形成されたと考えてモデル化しており、強震動評価用の特性化震源モデルのアスペリティも右横ずれを主体とする和泉山脈南縁部分に置くことにする。具体的には、図4.3-1に概要を示すように、根来断層を中心とした地域に第一アスペリティ、金剛山地東縁部分に近い五条谷断層を中心とした地域に第二アスペリティを置き、その面積比を2:1( 石井ほか, 2000 )に設定する。

 4.3.2 破壊開始点と破壊様式の設定

 前述のような本検討での和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分の位置付けを前提に考えると、中央構造線想定金剛和泉地震の断層面の破壊は全体としては西から東へ進行すると考えた方が自然である。しかし、この地域では断層の破壊進行方向を示唆する具体的な情報は得られていない。そこで本検討では、全体として東から西へ破壊が進行するケースも想定する。具体的には、第一アスペリティ西下隅から破壊が開始して同心円状に伝播するCase 1と、第二アスペリティ東下隅から破壊が開始して同心円状に伝播するCase 2をそれぞれ設定する。図4.3-1に、両ケースの破壊開始点を★印で示す。
 破壊伝播速度はS波速度の0.72倍( Geller, 1976 )と仮定する。

 4.3.3 その他の微視的パラメータの設定

 その他の微視的パラメータは、強震動評価レシピに従って設定する。

4.4 特性化震源モデル

 以上の検討により作成された中央構造線想定金剛和泉地震の特性化震源モデルについてまとめる。
 表4.4-1に、中央構造線想定金剛和泉地震の断層パラメータを示す。
 図4.4-1に、中央構造線想定金剛和泉地震の断層モデルを示す。図中、大阪府・和歌山県境やや南寄りにあって県境とほぼ並行する線分は和泉山脈南縁部分に対してモデル化された地表トレース、矩形領域は断層面、陰影はアスペリティで、西側が第一アスペリティ、東側が第二アスペリティである。Case 1の破壊開始点は★印で、破壊は第一アスペリティの西下隅から同心円状に広がる。Case 2の破壊開始点は☆印で、破壊は第二アスペリティの東下隅から同心円状に広がる。
 詳細法による強震動評価に用いるための断層要素を断層面上に追記したものが図4.4-2図4.4-3である。和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分とが交錯することにより見づらくなるのを避けるため、和泉山脈南縁部分のみを図4.4-2に、金剛山地東縁部分のみを図4.4-3に、それぞれ分けて示した。図中には、和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分の交差線の位置を示し、いずれも、交差線以深にあって計算上は背景領域として扱う部分も含めて図示した。


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