4.2 巨視的断層パラメータの設定

 中央構造線想定金剛和泉地震の震源断層の推定結果に基づいて、巨視的断層パラメータを設定する。

 4.2.1 断層の位置と走向の設定

 長期評価(地震調査委員会, 2003a)による断層帯の位置に概ね対応させるように、中央構造線想定金剛和泉地震の位置と走向を設定する。ここでは前述のように、和泉山脈南縁部分は右横ずれを主体とする断層帯と考え、その北側ブロックの東側末端部に逆断層の金剛山地東縁部分が形成されたと考える。断層帯を構成する多くの活断層を細かく見ると複雑に分岐・湾曲しているが、強震動評価に用いる巨視的断層モデルの地表トレースとしては、右横ずれを主体とする和泉山脈南縁部分と、これに直交する逆断層の金剛山地東縁部分とによって、大きくモデル化することにした。
 図4.2-1に、中央構造線想定金剛和泉地震の特性化震源モデルの設定概要を説明する。長期評価に示された断層帯の端部の位置は次の通りである。

和泉山脈南縁部分 西端: N 34°14′,E 135°04′(図中a)
和泉山脈南縁部分 東端: N 34°23′,E 135°42′(図中b)
金剛山地東縁部分 北端: N 34°32′,E 135°41′(図中c)

 和泉山脈南縁部分の複数の活断層は東西にほぼ直線的に並んでいるので、長期評価による和泉山脈南縁部分の西端(図中a)と東端(図中b)を結んだ直線abを和泉山脈南縁部分の巨視的断層モデルの地表トレースとする。走向はN74°Eである。金剛山地東縁部分はやや湾曲しているが、前述の考え方に基づいて、長期評価による金剛山地東縁部分の北端(図中c)から直線abに直交する直線cdを引き、金剛山地東縁部分の巨視的断層モデルの地表トレースとする。走向はN344°Eである。

 4.2.2 断層の傾斜角と長さ・幅の設定

 長期評価(地震調査委員会, 2003a)によれば、和泉山脈南縁部分は北傾斜の右横ずれ断層、金剛山地東縁部分は西側隆起の逆断層とされている。断層の傾斜角については諸説あって定かではないが、長期評価によれば、いずれも15〜45°とされている。
 本検討では、和泉山脈南縁部分の右横ずれ断層の活動と金剛山地東縁部分の逆断層の活動を中央構造線想定金剛和泉地震という一つの地震によってモデル化するため、北に傾斜する和泉山脈南縁部分の断層面の最深部を西に傾斜する金剛山地東縁部分の断層面の北端に連続させるのがモデルとして自然である。そこで、図4.2-1において、和泉山脈南縁部分の巨視的断層モデルの地表トレース(直線ab)に平行かつ金剛山地東縁部分の北端(図中c)を通る直線を引き、これを和泉山脈南縁部分の巨視的断層面の下端と考え、この直線に和泉山脈南縁部分の西端(図中a)から垂線aeを下ろすと、垂線の足eが巨視的断層モデルの西下隅になる。断層下端深さ15 kmから逆算すると、傾斜角は43°となり、長期評価の範囲内でモデル化されていることがわかる。前述のように断層の傾斜角については諸説あって定かでなく、和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分の傾斜角の大小を論じるだけの根拠もないことから、ここでは、和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分の傾斜角をいずれも43°に設定してモデル化する。
 断層上端深さは4 kmなので、図4.2-1において作図すると、巨視的断層モデルはそれぞれ次のようになる。

  • 和泉山脈南縁部分: 台形fgie
  •       上端: 線分fg   長さ60.0 km
  •       下端: 線分ei
  • 金剛山地東縁部分: 三角形ghi
  •       上端: 線分gh   長さ11.8 km
  •       下端: 点i

 いずれも断層上端深さ4 km、断層下端深さ15 km、傾斜角43°なので、それらから断層幅を求めると16.1 kmとなる。線分giが、和泉山脈南縁部分と金剛山地東縁部分の交差線の位置となっている。
 以上のように設定した巨視的断層モデルの幾何学的形状の正確な理解のために、図4.2-2に、中央構造線想定金剛和泉地震の断層面の展開図を示して解説する。

 4.2.3 その他の巨視的パラメータの設定

 その他の巨視的断層パラメータは、強震動評価レシピに従って設定する。
 その結果のうち、図4.2-3に、既往の研究で示された地震と比較して、中央構造線想定金剛和泉地震の地震モーメントと断層面積を★印で示す。図4.2-4に、既往の研究で示された地震と比較して、中央構造線想定金剛和泉地震の地震モーメントと短周期レベルを★印で示す。中央構造線想定金剛和泉地震のパラメータは、いずれも、既往の研究によって明らかにされた過去の地震の平均的なパラメータの関係に従って設定されている。


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